ラーメン北斗


毎日メシ食う中で「うますぎる・・」と唸ってしまう事って少ないよねぇ?

高校時代、毎日帰りに寄った中華屋はまさに奇跡的なうまさだったのね。
通ってるうちに「ウチでバイトしない?」と親父さんから誘われ、
16歳の時、初めて本格的にバイトしたのが写真の「ラーメン北斗」!

皿洗いから始まって、とにかくスピードと確実さが勝負だったね。

親父さんと綺麗な奥さんとオレの3人で店を回しながら、
出前も良く行ったんだけど、時代が時代だから住所と地図で行くわけ!

チャリにオカモチつけて府中の町並みをカラカラ走らせるんだよね、
いっこうに見つからなくてラーメン伸びちゃってあせったり、
ピンポンして開いたドアがヤクザの事務所で、完全にフリーズしたり・・・

3億円事件で有名な府中警察の近くだったから署にも良く出前持ってったなぁ。
刑事さんに「頑張ってる?」なんて言われると妙にうれしかったよ!
なんか「社会で生きてるなぁオレ・・・」みたいな(笑)。

親父さんは小さい頃に両親を亡くし、妹を親代わりに育てながら、
手に職をつけていった人だから、厳しいんだけどすごく優しかった。
味に対するこだわりもすごかったし、お客さんの気持ちをいつも考えてたね。

仕事が終わると必ず好きなもん食わせてくれて、これが激烈にうまかった。
まだ高校生だったから、たまにふてくされたりしてずいぶん迷惑もかけたなぁ。

辞めるとき、大好物の焼肉ラーメンを作ってくれて話をしてくれた。
「志村君、人の嫌がることを率先してやる男になること。見てる人は見てるよ。」
焼肉ラーメン食いながら泣きそうになってて、でもカッコ悪いから誤魔化して・・

あれから20年以上過ぎて、ラーメン北斗はもうありません。
オレもずっと行ってなかったけど、ことあるごとに思い出すんだよねぇ。
いまだに「そうだよなぁ・・」と思うことをいっぱい教えてもらった。

何があったのかわからないけど、なんで世の中は「北斗」を奪っちゃったの?

でも、考えてみると北斗で学んだ事はずっと大切にしてきた気がする。
だからオレは死んでも性根のまがったヤツにはならない。北斗イズムでいく。

「志村君、ギター弾くんだろ?コンサートあったら呼んでくれよな!」
北斗の親父さんの優しい声が今でもはっきりと聞こえてきます。